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就活も入社式もないドイツ社会

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「新卒一括採用」「入社式」」というのは日本企業独特の習慣であり、海外の企業はどこもやっていない。このような日本企業独特の習慣は、海外の事情をよく知る日本人から時代遅れだと指摘されている。

 

 

この記事について、まずは、結論から単刀直入に言うことにする。学校在籍時期に学生が行う「就活」、会社に入社した後に行われる「入社式」というのは日本独特の習慣であり、外国ではどこでも行われていない。写真上は典型的な日本の大手企業での入社式の様子。

 

「就活」の後に企業から「内定」をもらうという、「新卒一括採用」のウィキペディアの説明。この制度は日本独特のものであり、日本以外の国では行われていないと、説明にはっきりと書いてある。

 

新卒一括採用(しんそついっかつさいよう)は、企業卒業予定の学生(新卒者)を対象に年度毎に一括して求人し、在学中に採用試験を行って内定を出し、卒業後すぐに勤務させるという世界に類を見ない[要出典]日本独特の雇用慣行である。

明治期に下級ホワイトカラーの採用から始まり第二次世界大戦前ごろまでには定着しており、戦後復興期の人手不足によって大企業高卒者を大量に採用したことから確立され、21世紀現在の日本では一般的な雇用慣行である。企業では「定期採用」とも呼ばれる。

 

ja.wikipedia.org

ドイツの場合は「新卒一括採用」が存在しないのだから、「入社式」も存在しないのである。そもそも日本の伝統的な入社式というのは、「年功序列」「終身雇用」というふうに会社が数十年後にも存在しているという前提で行われるものであり、今の日本のように5年後から10年後には大手企業でも倒産、あるいは経営統合されて大量に中堅社員までもがリストラされる状況では、入社式はあまり意味がないと思う。さらに、数年前に僕の仕事仲間の友達と話し合っていたら、「どうせ入社式に出席して入社しても、今の20代の社員は30歳前には転職する人が多いから、入社式なんて意味がない」と言っていた人がいた。(苦笑)

 

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ドイツの大学を卒業した新人は、1年から2年間のインターン期間の後に本採用が決まる。どんなに大学での成績が優秀でも、いきなり本採用が決まるという大卒新人はいない。

 

それでは、ドイツではどのように企業に採用されるのかというと、ドイツの大学の新卒採用の場合は、大学卒業の後に1年から2年のPraktikum(インターンシップ、実習期間)の後に、「本当にこの企業で長期間労働する気があるか」ということを、会社の人事の人と納得いくまで話し合って、その後に本採用が決まるのである。また、当然ながら大学時代にどのような研究をして、どのような論文を書いたのかということも重要だである。日本のように合同面接会で長くても1時間以下という短時間の面接をして、それで「内定」を勝ち取るという制度ではないのである。あるいは、日本の大手企業の場合だと、「偏差値60未満の大学卒業予定の学生は初めから相手にしない」という企業もあるが、そういうこともまずない。大学のランクよりも大学でどのような勉強をしてどのような論文を書いたかが重要視されるのである。

 

写真上はシュツットガルトにあるダイムラー・ベンツの本社だが、いきなりこの本社で採用される大学の新卒学生というのはほとんどいないらしい。僕がシュツットガルト近郊に住むドイツ人家庭に1999年春にホームステイしていた時は、ここに部長として勤務するH家にホームステイしたが、H家の主人(当時55歳)もすぐにここで勤務できたわけではなかった。

 

僕がホームステイをしたH家の主人はノンキャリアでベンツの部長になったけど、初めは高校卒業の後に実家に近いハンブルク近郊でカーディーラーとして働き始めて、「商業マイスター制度」の試験に何度か合格して、約20年後にシュツットガルトにあるベンツ本社に勤務できるようになった。

 

H家の主人と奥さんは元はというとドイツ北部のハンブルク出身であり、ドイツ南西部にあるシュツットガルトからはかなり離れた所の出身だった。Hさんは大卒ではなくて高卒のノンキャリアの採用であり、叩き上げでベンツ社の部長になったという経歴を持つ。Hさんは高校を卒業した時にカーディーラーの免許を取得して、まずはハンブルク郊外にあるカーディーラーの事務所に勤務したという。Hさんはナチスドイツが降伏する直前の1945年1月の生まれだから、働き始めたのは1965年頃のことだったのだろう。

 

それから、多くの商談を成功してまとめて、さらに、カーディーラーとしての免許を新人として働き始めてから、数年に1回行われるカーディーラー向けの試験に何度も合格して、その度に給料が上がり、キャリアに箔がついたと言っていた。そして、約20年後に念願のダイムラー・ベンツ本社勤務となって、ハンブルクからシュツットガルト近郊に今の家を購入することができたのだった。これは「商業マイスター制度」といって、今でもドイツでは大学に行かないで叩き上げで会社の幹部になりたい若者向けに、この制度は存在する。H家の長男と長女もけっこう頭が良かったのだが、両親とよく話し合った結果、「お父さんと同じように叩き上げでマイスターになる」ということを決めたので、2人とも大学には行ってなかった。それでも長男にはフィアンセがいて、長女は既に結婚していて安定して満足した生活を送っていた。

 

 

日本の大企業は海外でもビジネスをしている国際企業なのに、日本人の学生向けの「新卒一括採用」があるせいで、「人種差別的な採用」とILO(国際労働機関)から警告されてる。

 

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さらに、日本の特に海外でビジネスを行っている国際企業には大きな問題がある。日本の企業は今は大手企業、特に日本が得意分野とする家電、自動車などのメーカーは世界でも有名な国際企業なのに日本人の重役が多すぎるし、日本人を優先して採用しているという問題があり、何度も国際連合内の組織であるILO「国際労働機関」から、「日本の国際企業の人事は人種差別的である」と厳しく警告されている。写真上はベルリンの中心部に、ソニーが2000年にオープンさせたソニーセンターである。このような日本企業の巨大な建物(ハード)を見て、現地のドイツ人が「日本企業のソニーで働くために日本語を勉強して、将来は日本の東京にあるソニーの本社に勤務したい」という夢を抱くのは当然のことだろう。しかし、当のソニー本社では日本人の新卒学生向けの合同面接会を行っているから、日本人の新卒を優先して採用するというのでは、ILOから「人種差別的な人事制度である」と警告されても仕方がないだろう。だから、「新卒一括採用」新人向けの「入社式」はなるべく早く終わりにして、日本の国際企業は他の先進国の国際企業と同じように、企業での実習期間を経ての随時採用制度に変えないといけなのである。