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ドイツ国歌と日本国歌。第二次世界大戦後の違い。

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ドイツ国歌も日本国歌も第二次大戦の敗戦国の国歌であるが、ドイツの方はほとんど問題はなくて、日本国歌に対しては隣国からクレームが付くことがある。その違いについて説明する。

 

Deutschland lied;『ドイツの歌』

1. Deutschland, Deutschland über alles,
Über alles in der Welt,
Wenn es stets zu Schutz und Trutze
Brüderlich zusammenhält,
Von der Maas bis an die Memel,
Von der Etsch bis an den Belt -
|: Deutschland, Deutschland über alles,
Über alles in der Welt. :|


 
2. Deutsche Frauen, deutsche Treue,
Deutscher Wein und deutscher Sang
Sollen in der Welt behalten
Ihren alten schönen Klang,
Uns zu edler Tat begeistern
Unser ganzes Leben lang.
|: Deutsche Frauen, deutsche Treue,
Deutscher Wein und deutscher Sang. :|


 
3. Einigkeit und Recht und Freiheit
Für das deutsche Vaterland!
Danach laßt uns alle streben
Brüderlich mit Herz und Hand!
Einigkeit und Recht und Freiheit
Sind des Glückes Unterpfand.
|: Blüh' im Glanze dieses Glückes,
Blühe, deutsches Vaterland. :|

|: ~ :| 繰り返し

 
1.
ドイツよ、全てに冠たる、
世界に冠たる我がドイツよ!
マース川からメーメル川、
エッチュ川からベルト海峡まで
護りの為に 如何なる時も
兄弟の如く団結すれば
ドイツよ、汝は全てに冠たる、
世界に冠たる我がドイツなり!

2.
ドイツの女性、ドイツの忠誠、
ドイツの酒、ドイツの歌。
その古への美しき調べを
この世にに保持し、
この命ある限り、
我らを気高き業へと赴かせよ。
ドイツの女性、ドイツの忠誠、
ドイツの酒、ドイツの歌。

3.
祖国ドイツの為の、
団結と権利と自由よ!
兄弟の如く心を重ね、手を取り合って、
皆で共に進もう!
団結と権利と自由こそ
幸福の証しなり。
この幸福のもと栄光あれ、
栄光あれ、祖国ドイツよ!

 

ドイツ国歌は「ドイツの歌」の第3番を正式な国歌としているが、1番が国歌としてふさわしくなくなったのは世界大戦に2度負けた結果、1番に歌われてる地名の全てがドイツ領ではなくなったから。

 


↑が、『ドイツの歌』の全文。第二次大戦に負けるまでは1番を歌っていたが、戦後は3番が正式な国歌になった。1番がなぜ歌えなくなったのかというと、“マース川からメーメル川、エッチュ川からベルト海峡まで”という部分が問題なのである。第二次大戦に負けた後、特にスターリンのソ連政府の要求で、ドイツは大きく領土を削られてこれらの地域はドイツ領ではなくなったため、ドイツの隣国からクレームがついて歌えなくなった。元ドイツ兵のおじいさんも、「ドイツ領ではなくなった地名が含まれてるから、国歌としてふさわしくなくなった」と言っていた。2番を国歌にしなかったのは、日本語訳を読めばわかるように国歌としては歌詞がふさわしくないから。写真上はベルリンにあるドイツの国会議事堂。

 
第一次大戦に負けるまでは”Die Wacht am Rhein”「ラインの護り」という歌が国歌のように歌われいてたらしい。その後、1922年、ヴァイマール共和国時代にこの歌の1番が国歌となり、ナチスの時代も歌われた。

 

元々、[Deutschland ueber alles]という歌詞は「ドイツは世界に冠たる国」という意味ではなくて、「ドイツ統一を国民全員で最優先に考えよう」という意味だった。

 

 

“Deutschland, Deutschland über alles, Über alles in der Welt”
という部分は、「ドイツは世界に冠たる国」という意味ではなく、19世紀半ばのドイツ統一問題の頃に、
「色んな問題の中で、ドイツ統一問題を最優先に解決しよう」
という思いで、作詞者のファラースレーベンは書いたという。だが、ナチスは「世界に冠たる偉大なるドイツ」という意味に曲解したという。
 
 
“Die Wacht am Rhein”「ラインの護り」という歌は、昔の映画ファンなら知っていると思うが、映画「カサブランカ」の中でドイツ軍将校たちが、ハンフリー・ボガードのバーで歌っていた歌である。それに対抗して、反ナチス運動家のラズロ(イングリット・バーグマンの夫)が指揮して、「ラ・マルセイエーズ」をフランス人たちが大声で歌い始めたため、ドイツ軍将校は沈黙してしまう。「カサブランカ」のとても有名なワンシーンである。恋愛映画の金字塔である「カサブランカ」は、実は言うとハリウッド制作の戦意高揚映画なのである。こちらがそのシーン。

 

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多くの国歌は元はというと軍歌なので勇ましいメロディが多いが、「君が代」は短調で暗いメロディなので、サッカー日本代表の外国人監督の中には嫌っていた人が多い。「サッカー国際試合の前に歌うにはふさわしくない」と言っていた。

 

国歌といえば、日本の「君が代」もよく問題となっているが、僕はなんだかこの歌はあまり好きになれない。ドイツ、フランス国歌のような壮大さ、勇ましさがあまり感じられないからだ。歌詞が古文なので、意味が若い人などにわかりにくいという難点もある。最近の解釈では、「君」というのが「天皇陛下」から「貴方たち」という意味に変えられたというが、いまだに年輩の方々は「天皇陛下」と思っているのだろう

 しかしながら、「君が代」を歌いたくないということではない。ただ、国歌にするなら、「軍艦マーチ」、「抜刀隊」のような勇ましい行進曲の方がふさわしいと思うのである。2002年の日韓ワールドカップ後から2006年のドイツワールドカップまでサッカー日本代表の監督だったブラジル人のジーコは、日本の暗い演歌などをすごく嫌っており、「君が代」についても「ブラジル国歌、フランス国歌のように士気を高揚する効果が全くない。ミーティングで選手の士気をどんなに高めても、国歌斉唱で暗いメロディの国歌を聞いたら選手の士気がまた下がってしまう」と言って、「君が代」は国歌としてはふさわしくないと言っていた。他の外国人の監督も似たようなことを言っていたと思う。

写真上はサッカーワールドカップの時に、ベルリンのブランデンブルク門前のパブリックビューイングに集まって、ドイツ国旗を振ってドイツ代表を応援するドイツ国民。サッカーの国際試合の時だけは、ドイツ国民は国歌を歌い、国旗を振って強烈に愛国心を表現する。

 

他の国の国歌も、例えば中国国歌というのは、
「日本軍と戦うために、みんなで力を合わせて前進していこう」
という共産党軍の軍歌がオリジナルなのだという。
ロシアの前身、旧ソ連の国歌というのは、
「ナチス・ドイツとの厳しい戦いに勝利した、偉大なるソヴィエト連邦万歳」
という歌詞だった。
それ以外にも、アメリカ、フランスなどの国歌も元々は軍歌だったというのだから、結局、「君が代」だけが問題なのではない。

その点でいうと、日本人とドイツ人は自分たちの国歌に問題意識を持っているのだから、世界の国々の中では珍しい国民なのではないだろうか?