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終戦時ベルリンでのドイツ人女性たちの悲劇を描いたドイツ映画

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前回、「戦争映画に登場する美女たち」というブログ記事を書いたら、けっこう評価をしてくれる☆がたくさんついて、高評価だったようなので、この記事でも映画に登場する美女について書きます。ただし、この記事はあまりにも悲しいドイツ女性たちの悲劇を描いたものです。読んでいて辛くなるかもしれません。

 

ドイツ語題名が[Anonyma-Eine Frau in Berlin](匿名ーあるベルリンの女性)というナチスドイツ軍が敗戦した後に、ベルリン市内に住むドイツ人女性たちがソ連兵に性暴力を受ける様子を描いたドイツ映画がある。

 

今回紹介する映画はナチスドイツ敗戦時のベルリンにおいて、ドイツ人女性がソ連兵に何度もレイプされる体験談を描いた「ベルリン陥落1945」であるが、邦題とこの映画のDVDパッケージだけを見ると、まるでベルリン攻防戦を描いた戦争アクション映画のように見える。しかし、映画の話はベルリンに住むドイツ人女性たちが次々とソ連兵によってレイプされていく悲しくて残酷な話であり、ドイツ語の原題は[Anonyma-Eine Frau in Berlin](匿名ーあるベルリンの女性)という。

 

上に掲載した写真がこの映画のワンシーンであり、ドイツ女性が占領軍のソ連兵の好奇の目の中で生活をしている。1945年5月8日にナチスドイツ軍が降伏した後、ベルリンの女性たちはこのような状況で生活しなければならなかった。これは、満州、樺太における日本人もソ連軍の侵攻によってかなり酷い目にあったので、やはり同盟国だった日本人にも同じようなことが起こったのだろう。その点、アメリカ軍、オーストラリア軍などの西側連合軍による占領だった日本本土はまだかなりマシだったといえる。

 

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上が「ベルリン陥落1945」というこの映画の日本版のパッケージだが、これは、「戦後のレイプが題材であまりにも暗い話だから、戦争アクション映画とか勘違いして見てくれる人がいればいい」ぐらいの感じで、こんなデタラメな邦題にしたんだろう。でも、どこかに「ベルリンでの女性たちの悲劇」を匂わせるような言葉を入れてほしかった。

 

この映画はドイツ語圏ではヒットしたが、その他の国では「第二次大戦で犯罪行為をしたナチスドイツの女性たちが復讐を受けても仕方がない」という感じで受け止められて、あまりヒットしなかったらしい。



ちなみにこの映画だがドイツ語圏では原作本もかなり知られているのだが、やはり、ヨーロッパ全体となると、ホロコーストなどのナチスドイツの犯罪>ドイツ人たちの被害ということで、「ハイルヒトラーと言っていたドイツ女どもが、戦後にどうなろうが自業自得だ」という感じでドイツ語圏以外ではほとんどヒットしなかったという。「ドイツ人が加害者」という映画はたくさんあるのに、この映画のように「ドイツ人は被害者」という視点で描かれた映画は、あまりヒットしない傾向にある。これは、同じ敗戦国である日本についても言えるかもしれない。

 

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写真上がドイツ語版の「匿名ーあるベルリンの女性」のパッケージ。見ればわかるように日本語版とは全く違う。

 

この映画はニコニコ動画に全編が上がっており、そこで見ることができる。下がそのリンク先。ニコニコ動画にアカウントを持っていないと見れないかもしれない。

 

www.nicovideo.jp

 

それで、アダルトビデオのレイプシーンというのは男視線で描かれているから、女子高生、OLなどを人気のない道で襲って何度も犯して男たちが大喜びするという描写なので興奮できるが、この映画のレイプシーンは全く興奮できず、逆に「全ての男の性犯罪者の性器を切り落とすべきだ」と怒りを感じるような描写になっている。それは、やはり女性の視点から戦争における性犯罪を描いているからだろう。ドイツの女性は1日に1回犯されるだけでは済まずに、1日に何度も犯されることもあった。それで、女友達に久しぶりに会った時は、「何回(レイプ)された?」「4回よ。あなたは?」(笑って頷く。「同じよ」という意味)というような挨拶をするシーンもある。

 

 

映画はナチスドイツ軍がソ連人にどんな犯罪行為を行ったかということも描いており、決してドイツ人だけを被害者とは描いてない。この辺がいつもドイツと日本を悪者として描く、アメリカの戦争映画とは違う点である。

 

 

さらに、この映画はアメリカ映画のようにアメリカ人のことだけを描いているのではなくて、敵のソ連人に対する同情も忘れておらず、ソ連の少年兵の一人が「僕はドイツ兵に家族を皆殺しにされたから、その怒りからまだ少年だけどソ連軍に志願したんだ!」と語って、東部戦線でのドイツ軍の残虐行為を描写するシーンもある。そこで、ベルリンの女性たちは、「私たちは夫、恋人がソ連で残酷なことをしたから、その復讐行為の一つとして性犯罪を受けているのだ」ということに気づくのだった。

 


最後に、僕はフェイスブックでドイツ人右翼思想の女性たちと交流しているが、彼女たちから「こんなマイナーなドイツの悲劇を描いた映画まで知っているなんて、あなたは本当に素晴らしい日本人だわ」と返信が返って来て、とても感謝された。やはり、ドイツ人の女性にとっては、今でも理由はなんであれ、自分たちのおばあさんの世代の人たちが、戦勝国にいじめられたことに腹を立てているようである。

 

これは、日本にもいえることで、昭和20年8月の終戦後に多くの日本人女性が進駐軍兵士に乱暴される様子を描いた「肉体の門」という邦画があるが、これを見て進駐軍の性暴力に怒りを感じた人は多かったようだ。