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日本人男性がドイツ人女性と結婚すると、彼のあだ名は「森鴎外」?

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2005年夏にドイツに旅行した時に、列車の中でフランクフルト駅からドイツ人の母と子供2人と相席になったが、 母の夫は日本人男性だった。「森鴎外みたいですね」と言うと、母は森鴎外を知っていて爆笑した。

 

2005年夏に僕が1人でドイツを旅行した時のことだった。その時は1999年春にホームステイしたシュツットガルト近郊に住むドイツ人家族の家に再び泊めてもらったり、ハノーファーに住むドイツ人女性の家で同棲したりしながら、約2か月間ドイツに滞在した。ドイツ人女性とは半年ほど前からメル友だったので、同棲してもいいと言われていたのだった。

それで、旅程もほぼ終わってハノーファーからフランクフルト空港にICE(日本でいうと新幹線のような高速鉄道)で移動していた時に、フランクフルトからドイツ人の母親と子供2人が乗ってきた。母親は子供を残して何かの用事で他の車両に移動したのだが、子供は日本人と白人のハーフという顔立ちで、なぜか日本の「おかき」「せんべい」というお菓子を持っていた。それで、日本人の僕を見ても何の違和感も持たずにニコニコ微笑んでいた。

だから、母親が戻ってきた時にドイツ語で、
「あの、日本に興味があるのですか?」
と質問したら、
「ええ、東京に1年ほど住んでました」
とドイツ語で答えた。それで、続けて流暢な日本語で、
「あっ、日本の方ですか?」
と質問してきたので、うなずくと、
「夫が日本人なんです。夫は切符が上手く取れなかったので、隣の車両に座っているんです」
と母親は言った。

それで、僕と母親は色々と日本語で会話をして、僕は仙台住みだけど、彼女の夫の実家は金沢であり、夫はシュツットガルトのドイツ企業で働いていて、家族でシュツットガルトに住んでいることがわかった。そこで僕は夫が日本人で妻がドイツ人ということから、
「でも、夫が日本人で妻がドイツ人だと何だか森鴎外の『舞姫』みたいですね」
と言った。彼女は爆笑して、
「そうですね。『舞姫』ですね。もちろん知ってますよ。森鴎外の『舞姫』」
と言った。その後もちょっと談笑したけど、僕の降りるフランクフルト空港駅は次の駅だったので、10分ほどで降りなければならなかった。少ししかそのドイツ人家族と会話が出来なかったのが残念だった。

日本人男とドイツ人女の夫婦というのはけっこう多い。プロレスラーで「理不尽ビンタ」で有名な蝶野の妻はドイツ人だし、元宇宙飛行士の若田光一さんの妻もドイツ人だ。それ以外にも僕はドイツ人の友達がいるから、けっこう日本人夫とドイツ人妻の夫婦を知っている。

 

 

写真上は森鴎外の晩年の写真。「舞姫」に登場する実在したドイツ人恋人のエリスとは、晩年まで文通していたらしい。鴎外はドイツから日本に帰ってきた翌年に親たちの決めた結婚をしているが、妻が男爵赤松家という名門の娘であったにもかかわらず、珍しいことにたったの1年の結婚生活で離婚している。結婚生活が長続きしなかったのは、ドイツ人恋人のエリスにかなり未練があったようだ。

 

 

森鴎外の書いた「舞姫」だが、事実では鴎外は妊娠して流産して発狂したエリスをベルリンに置いてきたのではなくて、21歳のドイツ人女性のエリスが東京までついてきてホテルに滞在したので、森家は大騒動になった。最後は軍医の鴎外が所属する日本陸軍がエリスの帰りの旅費を払って、事態を何とか収めた。

 


それで、森鴎外の「舞姫」という小説の真相だが、実際は森鴎外はドイツ人踊り子のエリスをベルリンで見捨てたのではない。1888年9月に森鴎外がドイツ留学から船で帰国すると、すぐ次の船で21歳のドイツ人女性エリーゼ・ヴィーゲルト(ニックネームはエリス)が、日本の横浜港に来た。エリスとしては鴎外と結婚して日本に一緒に住むつもりだったのだが、森家は江戸時代は士族の名門の家柄であり、鴎外を東京帝国大学医学部を卒業させてからドイツに留学させるような名門の家柄だった。しかも、当時の名門士族の家族のしきたりで、既に森鴎外の妻は森家の方で他の士族の娘と決めていた。とても、ドイツ人の素性をよく知らない若い女性とは結婚させられないということで、エリスは1か月ほどの滞在の後に帰国してもらうことになった。

もちろん、エリスの方も「私を外国人のうぶな子供扱いするな」などと言って抵抗したようだが、当時の日本の名門士族の封建的な決まりには勝てなかったようだ。最後は鴎外が所属する日本陸軍(森鴎外の本業は軍医)がエリスの帰りの旅費を払って、この事件は決着したらしい。その後は森家と日本陸軍が証拠隠しをしたので、エリスに関する記録はあまり残ってない。

 

しかし、今の日本人にもさっぱり理解できないのは、エリスの家族のメンタリティである。21歳のエリスが「私は日本人の留学生の森林太郎(鴎外はペンネームで、本名は林太郎)が好きになったから、彼と結婚して日本で一緒に生活して幸せになるわ。だから、お金を作ってちょうだい」と娘が言ったら、すぐに親が大金を作って娘に渡したことである。エリスのことを詳しく調べた本によると、エリスの家はそんなに裕福だったわけではないが、父が所有していた不動産を売って、エリスの日本までの船旅と日本滞在の旅費を工面したという。1888年にドイツから日本まで行くというと、今でいうと日本から、恐らく、南極辺りまで行くような難しい遠い旅だっただろうに、そんな娘の恋愛を家族で援助したというのが本当にすごいことだと思う。


僕はフェイスブックで交流している若いドイツ女性にもこの「舞姫」の話をブログに書いて紹介したことがあるが、彼女たちは一様に「森鴎外はとてもひどい悪い奴だわ。ドイツ人女性と一緒に生活して妊娠、流産までさせたのに、勝手に自分の出世のために日本に帰ってしまうなんて、絶対に許せない」と激怒していた。そこで僕はこれは小説で本当のエリスと鴎外の話は違うこと。さらに、1888年という日本にまだ貴族、士族とかの古い封建的な制度が残っていた時代は、名門士族の森家と外国人女性の結婚は不可能だったけど、21世紀の今ではそんな封建的な考えや制度は日本には残っていないから、日本人は外国人と何の障害もなく結婚できると教えたら、彼女たちは怒りをおさめて納得していた。(苦笑)

 

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この写真はベルリンのフリードリッヒ通り駅の近くにある森鴎外記念館の外観。フンボルト大学が管理しており、僕が行った時は日本人女性の留学生が受付をしていた。日本政府が東ドイツ政府に要請して、1984年に建てられた。

 

こちらが森鴎外記念館のリンク。

 

www.iaaw.hu-berlin.de