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名作戦争映画「遠すぎた橋」と「戦場にかける橋」

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映画「遠すぎた橋」の舞台となったアルンヘムで元イギリス兵のおじいさんと話をした後に「戦場にかける橋」を見たら、涙が止まらなかった。「戦場にかける橋」とは第二次大戦中に日本軍とイギリス軍捕虜が力を合わせて、クワイ川橋を建設するという話である。

 

 僕はミクシィにもブログを書いてますが、僕のミクシィで繋がりがある方々は軍事マニアの方々が多いです。フェイスブックは今はちょっとお休みをしてますが、同じく軍事マニアの人が多いです。軍事マニアの方々の多くは戦争映画を見ると涙を流すことが多いです。僕もたまに戦争映画を見て、ラストシーンの後に涙が止まらないことがあり、「戦場にかける橋」(原題は「クワイ川橋」)を見て目頭が熱くなることがある。僕は、この映画は今までに何度も見ているけど、2007年より前は泣いたことはなかった。

しかし、2007年8月に大きな変化があった。2007年8月に戦争映画「遠すぎた橋」の舞台になったアルンヘムを訪れた時に、元イギリス兵だったおじいさんにそこで偶然に出会ったのだった。これは先のブログ「『遠すぎた橋』の舞台となった街を訪れた(1)」で既に書いたことだが、もう一度書くことにする。僕がアルンヘム橋に来るのはこれが2回目だが、アルンヘム橋のたもとに置かれたイギリス第一空挺師団を讃える記念碑をデジカメで撮影していると、赤いベレー帽を被ったおじいさんが車から降りてきたのだった。その赤いベレー帽を見てすぐにイギリス第一空挺師団のベテランの方だとわかった。

それでおじいさんに質問をすると、やはり、
「私はイギリス第一空挺師団のベテランで、フロスト中佐の部下だったんだよ。思い出の地であるここに住んでいて、たまにボランティアガイドをしているんだ」
と教えてくれた。それで、僕はおじいさんに、
「不幸にも第二次大戦では日本とイギリスは敵同士でしたが、日露戦争と第一次世界大戦の時は日本はイギリスと同盟しており、そのお陰で世界の列強になることが出来ました」
と言った。それで、おじいさんが教えてくれたことだけど、既に「遠すぎた橋」を50回以上見ている僕にとっては別に真新しい事実はなかった。でも、元英第一空挺師団のベテランの方と話が出来たのは大きな収穫だった。

 

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一方のビルマ(現在のミャンマー)を舞台にした「戦場にかける橋」という映画だけど、軍事マニアならこの映画を既に見たことのある人は多いと思う。ネタバレになるが、ストーリーは、日本軍将兵とイギリス軍捕虜がクワイ河に架ける鉄道橋を建設するというお話。初めは両者は激しく対立して、残酷な日本軍捕虜収容所長の斎藤大佐の命令による虐待で英軍捕虜には死者まで出るが、最後には相互理解のような感情に至り、力を合わせて未開のジャングルに鉄道橋を作るという話である。

その鉄道橋がラストではイギリス軍のコマンド部隊によって爆破されてしまい、橋の建設のために努力した日本兵、イギリス軍捕虜の多くが死んでしまう。なんとも救いのない悲しい結末。イギリス人の友達がいる人だったら間違いなく号泣するだろう。最近の若い人は「ミスト」という架空SFのラストが重いというが、「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」のラストの方が実際にあった話を原作にしているので、何十倍も重い。

この映画のメッセージは簡単に言うと文明批判である。サー・アレック・ギネスが演ずるニコスソン中佐は、日本軍将校たちとある程度和解して橋の建設の指揮を執り始めた時に、
「ビルマの未開のジャングル、そして、非文明人の現地人(ビルマ人たちのこと)に、先進国文明の偉大さを教えてやろう。我々が架ける橋こそがその良い例になるのだ。日本兵たちも少し乱暴ではあるが彼らも文明人だ。彼らと一緒にこの未開のジャングルに文明を持ち込むこと。これが、我々の使命だ」
ということを言って、日本軍と力を合わせて橋を建設することを始める。

そして橋を爆破に来た英軍コマンド部隊の隊長も、
「こういう未開のジャングルでは、文明を知らない無知な現地人に頼るしかない。ヨーロッパ戦線とは随分と違うな」
というようなことを言って、ビルマ人のことをバカにしていた。

ところがラストシーンでは日本兵と英軍捕虜が力を合わせて建てた橋を、英軍のコマンド部隊が爆破するのである。英軍同士で殺し合いをするシーンすらある。その狂気の戦いぶりに英軍コマンド部隊の手伝いをしていた野蛮人のはずのビルマ人女性は、みんなゾッとして引いてしまう。つまり、先進国の文明人こそが最も野蛮だったということで、サー・デヴィッド・リーン監督による痛烈な文明批判というのが、この映画のメッセージである。ラストシーンでは生き残ったイギリス軍将校が、「狂ってる!」を連発する。

実際に元ドイツ兵、イギリス兵のおじいんさんなどから戦争の体験談を聞くということは、戦記本、歴史本を何冊も読むよりも大きな衝撃と影響を僕のような戦後生まれの世代に与える。


僕が2007年に元イギリス兵のおじいさんに会ってから、映画のラストで思うようになったのは、
「今ならアルンヘム橋で会った元イギリス兵のおじいさんと談笑した時のように、イギリス人といつでも談笑できるのに、当時は映画で描かれているように、殺しあわなければならなかったんだな」
という感情だった。それでも、イギリス人数人と話をした後にこういう実際にあった悲劇を描いた映画を見ると、何とも悲しくなって目頭が熱くなる。


余談になるが、「戦場にかける橋」で残酷な捕虜収容所長、斉藤大佐を演じていた早川雪洲は、ハリウッドで最も早く大成功した日本人俳優である。僕もよく知らなかったのだが、ハリウッド黎明期の1910年~20年代に主に悪役東洋人を演じて大ブレークし、当時は、チャップリンと人気を二分したほどだったという。ハリウッドの近くにお城のような豪邸を建てて、毎週末にはアメリカの各界の著名人を招いて豪華なパーティを開いていた。

さらに余談だが、ニコルソン中佐を演じたサー・アレック・ギネスは後に「スターウォーズ」シリーズでオビ・ワン・ケノビの役を演じて、若い映画ファンにはオビ・ワンのイメージが強いが、本人は宇宙人であるこの役は本当は演じたくなかった。だから、若い映画ファンから「オビ・ワン・ケノビ役のおじいさんだ」と言われると、不愉快になることがあったという。彼自身がとても気に入っていたのは、アカデミー主演男優賞を受賞した「戦場にかける橋」のニコルソン中佐の役と、「アラビアのロレンス」のファイサル王子の役だった。


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写真上は「戦場にかける橋」の1シーン。早川雪州が演ずる斎藤大佐と、アレック・ギネスが演ずるニコルソン中佐。

 

写真中は僕が2007年8月に英第一空挺師団のベテランのおじいさんに会った、アルンヘム橋のたもとに立つ英第一空挺師団の記念碑。おじいさんはここに住んで老後を過ごしており、たまにガイドをしている。でも、恐らく残念だが既に亡くなられただろう。まだ生きておられたら、もう100歳近くだと思う。

 

写真下は、日本がイギリスと同盟をしていた日露戦争から第一次世界大戦の頃の大日本帝国の様子。日露戦争と第一次世界大戦で勝者となった日本は、世界列強倶楽部の仲間入りをした。しかし、その後に英米に対しては生意気な国になったので、第二次世界大戦では袋叩きになった。