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ドイツ語圏の人と話してはいけない映画について

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日本でもヒットした「ヒトラー最期の12日間」の主人公のユンゲの言葉、「私はホロコーストなどの犯罪行為は全く知らなかった」は嘘らしい。それに彼女は戦争中に親衛隊の将校だった夫が戦死しているのに、その話が全く出てこない

 

映画、歴史小説におけるフィクションはどこまで許されるのだろうか?「映画、歴史小説を見て歴史の勉強をしている」という人がたくさん多くて特に若者に多いが、映画、歴史小説というのは、かなりのフィクションが入っていることを頭に入れておかないといけない。

ドイツ映画でヒトラーとナチスドイツの最後を描いた「ヒトラー最後の12日間」という映画があるが、この映画は半分くらいがデタラメなのである。まずは、主人公のユンゲ秘書はナチスドイツのホロコースト政策、アーリア人種優秀政策などにはほとんど興味がなく、ニュルンベルク裁判で初めてナチスドイツの正体を知って驚いたなどと冒頭で述べているが、これは全くのデタラメだ。

実際のユンゲは第12SSヒトラーユーゲント機甲師団の将校だったSS中尉と結婚しており、ヒトラー秘書になることを志願したくらいだから、ナチズムにある程度の興味はあったはずである。彼女は2002年に死ぬまでナチスドイツの詳しい政策は知らなかったと言っていたというが、1943年中旬からヒトラーの自殺まで地下壕にいてヒトラーの遺書をタイプした秘書が、ホロコーストもナチスの政策もほとんど知らなかったというのは極めて不自然だ。さらに、彼女のようにナチス高官をよく知る女性というのは女性映画監督レニ・リーフェンシュタールのように、ドイツが統一される頃までは西ドイツではタブー的な扱いだった。

「ヒトラー最期の12日間」という映画が、1990年代でなくて2003年に完成したというのは90年代に制作するとモーンケ、ギュンシェといったSS将校の他の総統地下壕の生存者が生きており、そういう人々からのクレームがつくと予想されたからだろう。この映画ではあくまでもユンゲ秘書はナチスの正体を知らない無知な24才の女という立場でなければならなかった。ユンゲが「ユダヤ人なんて大嫌い。ナチスドイツの政治家さん、軍人さん、特に戦死した私の親衛隊将校が本当に可哀そう」などという彼女の本音を映画中で言っていたら、この映画はナチスびいきばかりで成立しなくなる。

 

ハリウッド制作のミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、西ドイツ制作でドイツ語圏で大ヒットした映画「菩提樹」のリメイクなので、ドイツ語圏では人気がない 。

 

 

この映画以外にもユダヤ人映画監督と音楽監督が作った「サウンド・オブ・ミュージック」もほとんどが嘘である。この映画はドイツ映画でトラップ家族の人生を描いた「菩提樹」([Die Trapp Familie]「トラップ一家」がドイツ語の原題)というドイツ映画のリメイクである。トラップ家族の本当の姿を描いた「菩提樹」がドイツ、オーストリアですごく人気があるので、ハリウッドのユダヤ人が「サウンド・オブ・ミュージック」というタイトルにしてリメイクした。

 

ここでユダヤ人と何度も書いているが、別にユダヤ人が嫌いとか悪いのではなくて、この映画のブロードウェイ版ミュージカルの作曲と音楽監督をしたリチャード・ロジャースとオスカー・ハマーシュタイン2世という人は、本当にユダヤ系ドイツ系アメリカ人なのである。これは、ナチスドイツが台頭して「反ユダヤ政策」を始めた時に、アインシュタインがドイツからアメリカに亡命したように、多くの優秀なユダヤ人がヨーロッパからアメリカに亡命したためである。

それで、ドイツ映画の「菩提樹」がドイツとオーストリアではすごく人気があるので、ハリウッドのユダヤ系プロデューサーたちがリメイクした映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、あまりドイツとオーストリアでは人気がない。「ハリウッドのユダヤ人たちが、いつものようにナチスドイツのドイツ人とオーストリア人を悪役にした映画を作って、映画ビジネスをしている」ということで、ドイツ語圏ではタブー扱いになっている。トラップ家が住んでいたザルツブルクでこのミュージカル映画の話をすると、「それについては話したくない」と言って話すのを拒否する人までいるらしい。僕はザルツブルクには1995年の1月に行ったことがあるが、この街にはモーツアルトとクラシック音楽関係のお土産はたくさんあるけど、「サウンド・オブ・ミュージック」関係のお土産はほとんどなかった。そのことは、とても不思議に思えたのだった。

確かに、トラップ家はナチスがオーストリアを併合した時にアメリカへと亡命したが、トラップ一家の長であるトラップ大佐も第一次大戦の時はオーストリア・ハンガリー帝国に忠誠を誓っていた退役軍人という一種のファシストであり、映画に描かれているような自由主義と民主主義を愛する人ではなかった。トラップ大佐は成り上がり物が多いナチス党ではなくて伝統のあるハプスブルグ家のオーストリア・ハンガリー帝国に忠誠を誓っていたのであり、伝統的な貴族という家柄もあったので、「ヒトラーという貧民上がりの奴に忠誠を誓いたくない」という理由で、オーストリアを離れることを選んだのだった。別にヒトラーとムッソリーニを中心とする、当時のヨーロッパのファシズム政治運動に反対していたのではない。

 

 

ハリウッド映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、ナチスドイツに併合される前のオーストリアの情勢を正しく描いていない。

 


こちらが、「サウンド・オブ・ミュージック」のウィキペディアの説明。いかにドイツとオーストリアではドイツ映画「菩提樹」が人気があって、ハリウッド映画「サウンド・オブ・ミュージック」が人気がないかが書いてある。

 

ja.wikipedia.org



地元のザルツブルクを含むドイツ語圏ではこの映画はヒットしなかった。西ドイツではこの映画の9年前、ミュージカルが作られるより以前の1956年と1958年に同じくトラップ一家の物語を題材とした映画『菩提樹』、『続・菩提樹』が制作されており、ドイツ語圏での『サウンド・オブ・ミュージック』の不評とは対照的に『菩提樹』は「1950年代で最も成功したドイツ映画のひとつ」とも言われている[29]。そしてオーストリアではザルツブルクを除いて、21世紀に入るまでこの映画は1度も上映されていない。原因はこの映画が当時のオーストリアの現実とまったく異なるものであることに起因する[30]。

この映画のナチスに走ったツェラー、ロルフ、フランツを単純な悪役にしていては当時の複雑なオーストリアを理解することは難しい。故に『サウンド・オブ・ミュージック』が日本におけるオーストリアのイメージを最も強く歪めてきたと言われている[34]

 

 

ドイツ語圏では映画「サウンド・オブ・ミュージック」について語りたがらない人、あるいは全く知らない人がいる。

 


僕もシュツットガルト近郊に住むH家にドイツ語勉強のためのホームステイした時に、ハリウッド映画について家族とトークをしたことがあった。終戦直後のウィーンを舞台にした「第三の男」、戦時中のナチスドイツの迫害を逃れたフランス人たちのドラマを描いた「カサブランカ」などのクラシックの名作ついては、家族と笑って話し合うことが出来たが、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の題名を出すと、家族の人たちは「その映画はよく知らない」などと言って、引いてしまったのである。やはり、ドイツではトラップ一家の本当の姿を描いた「菩提樹」の方が圧倒的に人気があるので、「サウンド・オブ・ミュージック」についてはよく知らないようだった。

 

つまり、簡単に言うと、映画ドラマは史実を必ずしも忠実に描いていないので、歴史上の出来事を話す時に映画を絡めてトークをすると、「あの映画は嘘を描いている」と詳しい人に指摘されることがあるということ。日本人なら同じくハリウッド映画である「ラスト・サムライ」の話をしようとしても、あの映画は「西南戦争」などの明治時代の不平士族の乱をヒントにした嘘の話だから、外国人とトークのしようがないことがわかるだろう。(苦笑)

 

写真上は映画「サウンド・オブ・ミュージック」の撮影が行われたオーストリアのザルツブルクの街並み。ブログの文中でも書いたように、僕はここに1995年の1月に行ったことがあるが、なぜか、「サウンド・オブ・ミュージック」関連のお土産はほとんどなかった。その理由が、この映画のウィキペディアの説明を読んだ時によくわかった。写真下は映画の中で子供たちに歌を教えるために、ジュリー・アンドリューズが演じるマリアが弾いていたギターのイメージ。だが、完成した映画を見たマリア・フォン・トラップ本人は、映画の中での自分と夫の描かれ方に不満を抱き、「私と夫をこんな風に描かないでほしい」と言って、映画を制作したハリウッドの映画会社にクレームをつけたという。

 

 

最後に、僕のブログを訪れてくれてありがとうございます。この記事のようにドイツに約1年住んだ時に多くのドイツ人と交流した時の体験談以外にも、ドイツで10試合ほどブンデスリーガの試合を観戦していて、ドイツサッカーが好きな方に対して色々と興味深いブログ記事を書いているので、時間があったら他の記事も読んでみてください。ブログ記事の感想を書いてもらうと嬉しいです。ドイツ語の勉強の方法、ナチスドイツ軍に関する記事も書いてますし、これからもそういう記事を書いていきます。

 

 

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